日本の退去強制手続について。調査から送還、上陸拒否期間まで

届出・届出手続き

日本に滞在する外国人が、不法残留(オーバーステイ)や不法就労などの退去強制事由に該当すると疑われる場合、入管法に基づいた厳格な手続が行われます。万が一の際や知識として、そのプロセスと仕組みを正しく理解しておくことが重要です。

1. 違反調査:どのように調査が始まるのか

まず、入国警備官が違反の疑いがある外国人に対して違反調査を行います。これには主に以下の2つの方法があります。

  • 任意調査: 本人に出頭を求めての取り調べや、役所・学校・会社(例えば、不法就労が疑われる場合にハローワーク等の情報と入管のデータを照合するなど)への情報照会をして行われます。
  • 強制調査: 裁判官の出す令状に基づき、住居や建物の捜索・押収を行います。

2. 収容・監理措置・仮放免:身柄の扱いについて

調査の結果、退去強制事由に該当すると判断されると収容令書が出され、容疑者は収容施設へ収容されます。しかし、必ずしも全員が収容されるわけではありません。

  • 収容令書の内容: 氏名、国籍、容疑内容、収容場所、期間などが記載されます。
  • 監理措置制度: 逃亡の恐れがないと判断された場合、収容せず監理人(親族や支援者など)の監督下で生活させる措置です。
    • 監理人の役割: 本人の生活状況を把握し、入管への出頭や条件遵守を監督します。
    • 就労について: 原則不可ですが、許可を得れば生計維持のために必要な範囲で認められる場合があります。
    • 保証金: 300万円以下の保証金が求められる場合があります。もし支払えない場合は、監理措置が認められず収容されることになります。
  • 仮放免(収容の一時的解除): 刑事事件における保釈のようなもので、収容施設に収容されている外国人について、病気治療の必要性や人道的な理由などがある場合、請求または職権により、一時的に収容を解く仮放免という制度があります。

収容されるのか、又は監理措置や仮放免となるのかは、逃亡の防止と、外国人本人が受ける不利益(健康上の理由や人道上の配慮)のバランスで決定されます。

3. 違反審査と異議申し立て:3段階のチェック

入国警備官による違反調査の次は、入国審査官によるさらに詳しい違反審査が行われます。本人の権利を守るため、以下の3段階のステップが用意されています。

  1. 入国審査官による審査: 審査において違反があると判断された場合、本人に通知されます。本人が納得すればそのまま退去強制令書が出されます。
  2. 口頭審理(特別審理官): 通知に不服がある場合、3日以内に上級職である特別審理官に口頭審理を請求できます。ここでは直接意見を述べたり、証拠を提出したりすることが可能です。
  3. 法務大臣への異議申し出: 口頭審理の結果にも不服の場合、さらに法務大臣へ異議を申し出ることができます。

在留特別許可(在特)について 審理の過程で、日本人との婚姻など特別な事情がある場合、法務大臣の裁量で例外的に在留が許可されることがあります。これが認められると、直ちに放免され在留資格が付与されます。ただし簡単に許可されるものでは決してありません。

4. 送還と、再び日本へ来るための上陸拒否期間

退去強制が決まると、入国警備官によって送還されます。すぐに送還できない場合(パスポート紛失や送還拒否など)は、送還可能になるまで収容や監理措置、仮放免が継続されます。

また、退去強制となった後は、一定期間日本に入国できなくなる上陸拒否期間が設けられています。

退去強制後の上陸拒否期間

  • 5年間(原則) 初めて退去強制を受けたケース。過去に一度も退去強制を受けたことがなく、かつ出国命令*を受けて出国した経験もない場合に適用されます。
  • 10年間(リピーター) 過去に一度でも退去強制を受けたことがある、または出国命令によって出国した経験がある者が、再度退去強制となった場合に適用されます。
  • 1年間(特例による短縮) 初めての違反で、自ら費用を負担して指定期日までに日本を離れる自費出国許可を受け、実際に出国した場合に適用される特例措置です。
  • 無期限 薬物犯罪に関連する事由や、テロリストなど、特定の重大な理由によって退去強制となった場合に適用されます。

*不法滞在(オーバーステイ)などの違反をした外国人が、自ら入管に出頭した場合に、身柄を収容されることなく、簡易な手続で日本から出国することを認める制度のこと。

まとめ

日本の退去強制手続は、単に違反者を一律に排除するものではありません。以下の3つのポイントが、この制度の根幹といえます。

  • 厳格な調査と権利保護のバランス: 不法就労などの違反には厳しく対処する一方で、口頭審理や法務大臣への異議申し出といった3段階の審査により、本人が反論や事情を説明する機会が法的に保障されています。
  • 個別の事情に応じた柔軟な対応: 原則は収容ですが、健康状態や家族状況、人道的配慮に基づき、監理措置や仮放免といった収容を伴わない選択肢も存在します。また、日本人との婚姻などの特別な事情があれば在留特別許可が得られる可能性も残されています。
  • 将来を見据えた選択の重要性: 退去強制を避けることができない場合でも、自費で速やかに出国する意思を示す(自費出国許可)ことで、上陸拒否期間を5年から1年に短縮できる特例があります。これは、将来的に再び日本へ戻ることを希望する人にとって、非常に重要な選択肢となります。

退去強制手続に直面した際は、現在の状況がどの段階にあるのかを正しく把握し、監理措置の申請や自費出国の検討など、制度を正しく理解した上での冷静な対応が求められます。

初回ご相談は無料です。どうぞお気軽にお問い合わせください。
お一人おひとりの状況に合わせて、最適なサポートをご提案いたします。